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「で、でも……実際、どうしたらいいんすかね?」
「まぁ……慎重に降りるしかないんじゃないの。万が一落ちたら、そんときは頑張って受け止めてみるけど」
「はぅっ!つんけんどんなお兄さんが、不意に見せる優しさ……と、ときめきっす!」
「いいから。そういうのいいから、早く降りてこい」
「はーいっ」
てへっと舌を出して、笑顔を向けてくる。あざとすぎるが、しかし、なんつーかこう……ときめき?
「じゃあ、降りるっすよー」
宣言は元気よく、だけど、降りる仕草は恐々と。
幹に、枝に手をかけながら、ゆっくり降りてくる。
俺はといえば、落ちてきても受け止められるように女の子を見上げて、って、
「……ほぅ」
今さらではあるけれど。女の子は高いところにいて、スカート姿。そしてそれを見上げれば視界に飛び込んでくるのは、
「水玉、か……」
「は?なんすかいきなり……って、うひぁ!?」
自分がどういう状況で、何を見られているのか気づいたらしく奇声を上げる女の子。まあ、それはいいんだが、
「ておま、ちょっと待て……!」
いくらなんでも、木から両手を離してスカート押さえるのはマズイだろ!
「だ、だってお兄さんがエッチだからああぁああ!」
「不名誉なこと叫びながら落ちてくんじゃねーよ!」
咄嗟に腕を伸ばす。距離感は適切。だけど問題は、俺が衝撃に耐えられるかどうかで。
「フ、づ……!」
なんか、変な声が漏れたことを除けば。
「……大丈夫?」
特に問題なく、女の子は俺の腕に収まっていた。ある程度自力で降りてきてたのと、それから、予想よりもずっと彼女が軽かったからかもしれない。
「あ……は、はいっす」
こくこく。小柄な体躯を腕の中で丸めながら、女の子が頷く。短く切り揃えているわりには妙に長い前髪が、目蓋をくすぐって邪魔そうだった。
「で。なんで、あんなとこに登ってたの」
よいしょと女の子を下ろしながら、問う。お互い並んでみると、改めて露になる身長差に戸惑いつつ。
「あ、えっとー……ま、話せば長くなるんすけどー」
「そうなの?じゃあいいや」
「そっすよねー……てコラコラ、振ってきたのはお兄さんすよー?」
「降ってきたのはお前だけどな」
「わー、お兄さん上手ー」
パチパチー。素っ気なく乾いた音が響いたところで。
「あー、まー……長くなるなら、どっか座る?」
「――はいっす!」
なんとなく、そんな感じに落ち着いた。
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