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「さっきから……つーか、初めて見たときから気になってたんだけど」
「はぇ?私の可愛さの秘密っすか?そりゃーやっぱー、生まれもっての遺伝子とー」
「じゃあ、またいつか会おう」
「わーわー、待って、クールに席を立たないで!あと、さりげなく伝票を押し付けないで欲しいっす!」
「……チッ」
「舌打ちされた!?あれ、今この人、わりかし本気で支払い押し付けようとしてたっぽい!」
袖を掴まれ、渋々席に戻る。もちろん本気で立ち去る気ではなかったけど、そんなに焦るなら、いちいち冗談挟まなければいいのに。
……余談だが。白の、自分への評価は正しいと思う。確かに可愛い。言わないけど。それを自覚してて、冗談に使ってくるのはタチが悪い証拠だ。これ以上付け上がらせてもしょうがない。
本当にどうでもいい余談だったので、話を進める。
「それは、なに、趣味なの?」
白の頭頂部を指差し、尋ねる。
「はぇ?それってなん、す、か……?」
視線を追うように、自分の頭に手をやる白。俺が何を示しているのか分からない、という表情が一転。そのふかふかに触れるが否や、――サァと血の気が引いていった。顔色は白く、まさに名は体をあらわすといったてい。
「え、と……」
信じられない。白の目が、そう語っていた。
そして、その信じたくないことの真偽を、俺に尋ねてくる。
「もしかして、これ……ずっとつけっぱ、でした……?」
俺としては、その事実を否定してあげる義理もなく。正直に答える。
「うん。つけっぱだったね……猫耳」
「――っ、うああぁああ!?わ、私は、なんて恥さらしを……っ!?」
蒼白だった顔色が、羞恥で赤く染まる。
まあ、そりゃねえ。猫耳姿で街を歩き、ファミレスでくつろいでいたのだから、恥ずかしくて当然なのだが。
「ついでに言えば、それ、視線集めまくってたけど」
「やーめーてー、言わないでー!な、なんでわざわざ、羞恥を煽るっすか!」
「ファミレスの店員とか、ガン見だったけど」
「うなあぁああ!お兄さんがいじめるうぅううう!」
頭を抱えて、白が身もだえする。普通なら引くとこだが、なんというか、こう、頬が緩んじゃうのはなんでだろーね?
「うぅ……」
頭を抱える作業に疲れたのか、肩を落としながら猫耳を外す白。似合っていただけに、少し見た目の印象が薄れた気がする。いやまぁ、それでも可愛いのだけれども。
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