第一話~捜索開始~

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* ――さて翌日。昨日打ち合わせた通り、午前10時に駅前へと来てみたのだが。 「まだ来てないのか」 周りを見渡してみるも、白の姿はない。まあ、まだ正確には9時50分だからな。遅刻でもなんでもないし、気長に待とう。 「お兄さん、おはようございますっ」 それからしばらく。元気よく小走りでやってきた白に、言う。 「うんおはよう。それから、連絡先を教えなさい」 「え?どーしたんすかいきなり?……はっ、もしやこれは、『いつでもどこでもお前の声を聞きたいんだ』とゆー、お兄さんからのメッセージ……!?」 「ははは、今日も朝から絶好調だね。……で、なに。怒っていいの?俺、怒っていいの?」 「は、はぅ……す、すいません、ごめんなさいっ。遅刻するときに連絡できるように、連絡先を教えさせてください……!」 「ったく……」 そんなわけで。現在時刻は10時半。見事に、白の遅刻だった。 とはいえ、白は走ってきてたし、申し訳なさそうな顔をしてたから、悪気はなかったんだろう。だから俺も怒る気はなく、ただ、こういうときに連絡は取れたほうがいいだろうと思ったからこその質問だったのに……そこに悪びれもせず冗談で返してくるあたりが、白のキャラなのだろう。 「ではでは……」 カチカチと携帯をいじり、白がこちらへと携帯の背面を向けてくる。こちらも赤外線受信を起動して、携帯を掲げつつ、尋ねる。 「で、なんで遅れたの」 咎めるつもりでも、詮索するつもりでもなく、ただなんとなく口から出ただけの問い。会話を繋ぐための、深い意味もなにもない問いかけ。 「え?えと、それはっすねー……」 しかし。思いもかけず、白がたじろぐ。……なんだろう、そんなに、答えにくい質問だっただろうか。そう内心で首を傾げつつ、送られてきたアドレスを電話帳に登録して、 「そ、そのぅ……お兄さんと会うから、可愛い服を選ぼうと思ったら……迷っちゃって」 そのまま、携帯を落としそうになってしまった。白の言葉に動揺と胸の高鳴りが生まれ、妙に落ち着かなさを感じる。
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