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プロローグ~出会いはこんな感じ~
――話に聞いたことはあった。そう、猫が高いところに登ったはいいけど、降りれなくなったなんて話は、確かに聞いたことはある。
でも、いざそれを目にすると若干の驚きがあるというか、うわー、ほんとにこんなことあるんだー的感動を覚えるというか、とりあえず、まぁ、ビビる。
なんていうのは、ある一つの現実を無視した時の感想。つまり、木に登って降りられなくなってるのが猫だと脳内変換した結果、そう思ったという話。
けど、そろそろ視覚情報を脳内で誤魔化す作業にも疲れてきたから、ありのままに目の前の光景を受け入れて、よし、感想をさん、はい。
「えっと……どういうこと?」
驚きよりは、疑問符が先行する。けど、そりゃそうだと思う。
なにしろ、木から降りられなくなってるのは猫じゃなくて、
「はぅー、そ、そこのお兄さん、助けてくださいっす!」
そんなことを叫びながら涙目の、女の子なのだから。……猫耳つきの。
「あ、うん。それじゃあね」
「はい、お疲れさまでしたー……って、待つっすよ!なんで助けを求めたのに、何事もなく立ち去ろうとするんすか!?」
え~……だって、関わると面倒くさそうなんだもん。ていうか、ノリツッコミとか出来るならわりかし余裕だろという気もする。
――とはいえ。
「助けろって言われてもなぁ。どうして欲しいんだ?」
関わりたくねーっていうのが本音ではあるけど、ここで無視するのも寝覚めが悪そうだ。つまり、もう面倒を避けるのは手遅れっぽい。
「え、えと……飛び降りるんで、受け止めて欲しい、とか?」
「や、無理だろー。俺の足腰の骨が折れても良いなら、まあ、いけるかもだが」
「あ、じゃあいけるっすね。問題なしじゃないですか!」
「うん、そうだな。じゃあバイバイ」
「わ、わーわー、嘘です嘘、冗談ですって!だから、クールに立ち去らないで欲しいっすー!」
「ったく……」
そんなに必死に助けを求めるなら、余計なこと言わなきゃいいのに。ていうか、やっぱコイツ、結構余裕がある気がしてならないんだけど。
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