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それから十数分後……。
漸く捕らえたのか、騒ぎは収まった様だ。
そして、また来訪者の姿が見えた。
「待たれよ。この街へ来た目的をお聞かせ願おう」
「私は旅の者でして、今夜泊まる宿を求めてやって参りました」
物腰の低い初老の男性。
だが、私はそれくらいでは騙せん!
「見たところ、それは魔爆筒の様だが、何をするつもりだ?」
この男の腰に見えるのは数本の魔爆筒。
殺傷能力は極めて高い。
そんな危険な物を所持していながら、理由もなく通す訳にはいかん。
「ああ、疑われるのも無理は御座いません。しかし此れは新型の花火でして。一晩とはいえ御世話になる街ですから、少しでも住民の方々の癒やしになればと……」
花火か……。
なるほどな。
「それは大変失礼した。私は職務中の身故、見る事は出来ないが此処から音だけでも楽しませてもらおう」
笑顔で門を開け、男性を中へと通す。
すると数分後、景気のいい爆発音が鳴り響く。
「ん?花火を上げるにしては、まだ陽が高いが……。まあ、それも良いであろう」
何せ、悲鳴の様に叫ぶ程、住民達が喜んでいるのだからな。
さて、あと一時間もすれば交代の時間か。
帰りにハイド様の元へ寄っていくのも良いかもしれないな。
最近の衛兵の仕事ぶりには困った所が多いからな、恐れ多いが進言しなくてはなるまい。
本日も絶好調のアシュレイだった。
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