アシュレイのとある日常

4/4
前へ
/8ページ
次へ
それから十数分後……。 漸く捕らえたのか、騒ぎは収まった様だ。 そして、また来訪者の姿が見えた。 「待たれよ。この街へ来た目的をお聞かせ願おう」 「私は旅の者でして、今夜泊まる宿を求めてやって参りました」 物腰の低い初老の男性。 だが、私はそれくらいでは騙せん! 「見たところ、それは魔爆筒の様だが、何をするつもりだ?」 この男の腰に見えるのは数本の魔爆筒。 殺傷能力は極めて高い。 そんな危険な物を所持していながら、理由もなく通す訳にはいかん。 「ああ、疑われるのも無理は御座いません。しかし此れは新型の花火でして。一晩とはいえ御世話になる街ですから、少しでも住民の方々の癒やしになればと……」 花火か……。 なるほどな。 「それは大変失礼した。私は職務中の身故、見る事は出来ないが此処から音だけでも楽しませてもらおう」 笑顔で門を開け、男性を中へと通す。 すると数分後、景気のいい爆発音が鳴り響く。 「ん?花火を上げるにしては、まだ陽が高いが……。まあ、それも良いであろう」 何せ、悲鳴の様に叫ぶ程、住民達が喜んでいるのだからな。 さて、あと一時間もすれば交代の時間か。 帰りにハイド様の元へ寄っていくのも良いかもしれないな。 最近の衛兵の仕事ぶりには困った所が多いからな、恐れ多いが進言しなくてはなるまい。 本日も絶好調のアシュレイだった。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加