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「あれ……そうだっけぇ?」 覚える気ないだろ、と言おうとしたが、女に半ば強引に唇を塞がれた。 「ねえ、遥」 誘うように足まで絡めてくるが、俺はわざと女の髪をくしゃくしゃにしてやった。 「いやーんもーう」 不服そうにカラーリングした長い髪に手櫛を入れる女は、姫野瀬里奈という。自称二十歳、モデル。 彼女の言うことが本当かどうか、俺は知らない。別に、知らないままで構わないし、知ったところでどうするわけでもない。 「遥ってさ、変に冷めてるよね。友達とかに言われない?」 「何を言われても変える気はないよ」 「そういうところ、あたし好み」 合コンで知り合って以来懐かれてしまい、瀬里奈はたびたび俺のアパートに来るようになっている。 モデルをやっていると言うだけあって、整った目立つ顔立ちをしているし、身長も並の女より高い。体型も申し分ない。 今使っているジッポーライターは、彼女からの誕生日プレゼントだ。 「ねえ、今日の予定は?」 「なし」 「ほんと? じゃあ一緒にいられるね」 嬉しそうに抱きついてくる瀬里奈の髪を撫でながら、仕舞いに同棲しようなんて言うんじゃないだろうなと考えてしまい、俺は勝手にうんざりしてしまった。 何かが始まった途端に、終わりのことを頭の隅に置くようになったのは、いつの頃からだったろう。 暗い天井を見つめながら、ぼんやりとそんなことを思った……。 ―――――To be continued...
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