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(コンチすまない。俺が……俺が息子の仇討ちなんて考えなければ、お前は死なずに済んだのに……)
伏せていた男の瞳に、大粒の涙が溜まる。やがてそれは頬を伝ってぽたぽたと地面に落ちた。
「おぅおぅ、大の良い大人が泣くんですかあ? みっともねぇなぁ!」
刀剣の切っ先を手のひらに置いて、嘲笑しながら接近してくるシード一味の男達。
その光景をパットは黙って、食い入るように傍観していた。
(何故そうまでして見ず知らずの俺達の事を……自分の命を顧みないで……)
いつも自分自身の為だけに生きてきたパットにとって、男の存在は未知なるもの。
幼い頃から蔑まされ、煙たがれて暮らしてきたパットにとって、誰かに守られるというのは、初めての事であった。
「笑いたければ笑え! しかし、俺の命だけだぞ! 子供達に手を出したら呪い殺してやるからな!」
顔を上げ、凄い剣幕で怒鳴りつける男。だが、命を覚悟したとはいえ、死はやはり恐ろしい。
男の体は恐怖感に蝕まれ、それは震えとなって男の体を襲ってきた。
「……ひっひっひ、おい見ろよ。コイツビビって震えてやがんぜ! 虚勢を張らずに正直に言えよ! ガキの命より自分の命の方が大事ですって!」
「そしたら俺達はお前を見逃してやってもいいぜ……ただしガキらはあの世に逝ってもらうけどな!」
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