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「ほ、ほざけぇぇっ! 私の拳は超一流の真摯征拳だぁぁっ!」
俊敏な動きで体勢を立て直すアナリュー。瞬時に両腕を腰の横に構えると、まるで槍のように無数の突きを繰り出した。
この突きを避けるのは容易でない。常人ならば串刺しとなったチーズのように穴だらけにされていよう。
――だが、ヘンジロウはその攻撃を的確に見抜き、上半身の動きだけで全て避けきった。
「ハァ、ハァ、有り得ない……何故!? いくら優れた達人であっても、一太刀くらいは浴びせられる筈!?」
「優れた達人? ふっ、達人でなくともそんなスローな突きでは僕を刺せる訳がないだろう」
微笑を浮かべるヘンジロウ。それに対し、アナリューは小刻みに肩を震わせ、心中怒りに満ち溢れていた。
「そ、そんな、副隊長の攻撃が一切当たらないなんて!?」
「あの変態野郎は何者だ!?」
口々に恐れおののく男達。パットは口に出さなくとも男達と同様、驚いて開いた口が塞がらなかった。
「く、くっそおぉぉっ!!」
しゃにむに立ち向かったアナリューは、右拳を鋭い手刀に変えて、やぶれかぶれの一撃を見舞った。
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