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飛来してくる刃と化した手刀。 それをヘンジロウは寸前で見切ると、素早く手首を左手で押し上げ、攻撃をいなす。 「な!? うっ!?」 全体重を掛けた一撃は呆気なく流されてしまい、横に動いたヘンジロウに脚を崩されて、簡単に転倒してしまった。 「赤子と大人の戦いだ。あいつあんなに凄い奴だったのか」 思わず感心の言葉が洩れるパット。ただの変人だと思っていた男が、シードの右腕を手玉に取っているのだ。当然の如く、誰もがそう思うだろう。 「有り得ない有り得ない、こんな奴がフォックス様以外にいるなんて……」 戦意喪失、座して後退りするアナリューのその無様さを、冷徹な眼で見下ろすヘンジロウ。 「ふ、確か貴様は快楽を求めて生きているのだったな。ならば僕がその願いを今すぐに叶えてやるよ」 両腕を突き出し、体勢を屈めて接近するヘンジロウ。 「ひ、ひぃぃ、な、なによ!? 何をするつもり!?」 腰が砕けて立ち上がれないアナリューは、地面を蹴って迫り来る恐怖から逃れようとする。 だが、ヘンジロウは容赦なしに一瞬でアナリューのこめかみ部分に親指を突き刺し、腹の下辺りにも人差し指を突き入れた。 「――欲戒と仲絶という卑功を同時に突いた。お前の精神は果てしない欲に支配されて、腰が使えなくなるまで仲間を襲うだろう」
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