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僕の部屋は異常だ。この考えは今に思い付いた事ではなく昔から思っていたことだ。
異常。想像するのはグチャグチャで片付いていない部屋とか研究室みたいな部屋。赤い電球の部屋とかだろう。
期待を裏切るようで悪いが僕の部屋は、そういう異常性ではない。むしろ、シンプル。何もないと例えるのに等しい。
この2012年という科学の分野が桁違いに伸びた時代で本棚と机と押し入れのみの部屋。
何かがおかしいと僕は思う。世界中の何処かではES細胞でパーキンソン病を治療する技術や近年高い確率で起こるとされている地震で起こる津波。それを高度な技術が集約されたシュミレータで再現する機械が出てくるなか僕の世界は昭和で静止している。
部屋が昭和だと気持ちも昭和になるらしい。
さて、そろそろ自己紹介をしておこう本名は明かせないが取り敢えずTと名乗っておく。
僕は普通なる小学生だ。何年やっているかも分からないが小学生だ。
長くても6年だろ。って思うだろう。しかし、本当に何年も小学生をやっている気分なんだ。
いつ、終わるんだろう。この生活は。
Tが枕がわりにしている座布団は二つに折られTがその身を上げたとしても形を変えないほど使い込まれていた。
Tの眼鏡は何時も定位置。枕の少し上で行儀よく座っている。
彼がうたた寝を始めた頃。彼の世界は変わる。昭和で保たれたTの不安定な世界は、その姿を変えようとしていた。
昭和を飛び越え平成を飛び越え、まだ彼が知らない技術が光よりも早くニュートリノよりも早くTの世界に迫っていた。
世界は変わる。
机の引き出しが独りでに開き無機質な物体がTの顔を覗きこみ人間らしい声を発した。
「ぼく、ド〇〇もんです。」
(終)
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