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「そういえばそろそろ雛祭りの季節だなぁ」
ある晴れた日に何となく独りつぶやいた。
「雛祭り?」
「真琴ちゃんの国のお祭り?」
お正月以降日本の行事に興味津々なアリスとチェシャが俺の独り言に飛びついた。
「そっか、アリスは西洋圏だから雛祭り知らないんだな。雛祭りってのは女の子の為のお祭りだよ。」
「男は参加出来ないの?」
不思議そうにやまねが問いかけてくる
「参加出来ないとかじゃなくて、女の子が健康に育って将来元気な子供に恵まれますように。って祈る日なんだ」
「子供の将来を祈願する神聖なものなのだな」
何やら感心したようにダムがつぶやく。
「いや~~間違ってないけどそんな畏まったかんじじゃない、かな?…………いや、でも準備とか片付けとかやたら大変だし畏まってるのかな?」
「実際どんなことをする祭りなんだ?」
白うさぎも妹いるって言ってたし、やっぱり気になるのかな。
「まず雛人形を飾るだろ、うち共働きだから妹の雛人形は俺が出してたんだけど、一日飾りはダメな!んで、終わったらすぐしまう!じゃないと嫁に行き遅れるって言われてるんだ!準備も大変だぞ!桃の花を飾ってひし餅やらひなあられ、白酒、散らし寿司に蛤のおすいもの!学校休みにしてくれってほど忙しいんだ!!!」
「ひしもち?」白うさぎ
「ひなあられ?」チェシャ
「白酒とは正月の甘酒みたいなものか?」ダム
「ちらしずし?」やまね
「ハマグリの……スープのこと?」アリス
「そもそもひな人形とはどんなものなんだ?」呆れ顔の帽子屋
みんなの不思議そうな顔をみたら、懐かしさとあの重労働を思い出し力説してしまった自分が突然恥ずかしくなった。
「簡単に言うと結婚式を模した人形を飾っていつもより手の混んだ飯食って、カワイイ系な菓子食ったりする日……なか?」
なんかアバウト過ぎて自分の発言に自信なくなってきたかも。………ん?アリスの視線が突き刺さる。俺の顔でキラキラした目とか勘弁してくれ。
「おにーーぃちゃん♪雛祭り、しよ♪」
これだけ語っておいて断ることはできなかった。
いつも独りでせっせと用意していたが、みんなに手伝ってもらえば準備もきっと楽しいな…………。うちのひな人形……ちゃんと出してくれるかな。家族は今でも心配しているだろう。俺だけ楽しんで……
「真琴。」
今俺はどんな顔してたんだろう、俺の頭を優しく撫でるこの手が温かい。
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