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「ピタゴラスとかじゃないの?」
ビクッ。なんともなしに呟いたわたしの独り言に対する予想外の答えに肩が震えた。
「(え…、誰?…男?)」
辺りを見渡せば右隣に見慣れぬ顔。
廊下側の窓枠に手をかけ覗き込む男子生徒がいた。
彫刻かってくらい整った顔。いわゆる、イケメンさん。
パッチリ二重まぶたで優しい目元。
でもそこから注がれる視線は痛いくらいに鋭くて、見つめられたらたぶん一瞬で射抜かれてしまう。
スッとした鼻、ゆるやかに弧を描く薄い唇、ほんのり色付く頬。
彼の顔のパーツはどれをとっても一級品で、それらが黄金比ですか?ってくらいに絶妙な配置でそれぞれの場所に鎮座している。
極めつけは髪。
ふんわりしているそれは自然と指を通したくなるくらいで。
ふわふわでサラッとしている。
それでいて艶がある。艶のある、黒。
真夜中の闇にも溶け込んでしまいそうなほど、黒。
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