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1年前――。
大陸の南東部、ノトス地方にある町の名はランディール。そこは自然に恵まれた緑豊かな土地で、皆のんびりと幸せに暮らしていた。
だがある日のこと。それは突然やってきた。
耳をつんざくような獣の雄叫びと、人々の悲鳴が辺りに響き渡る。
「なんなんだよ……これ」
10代後半の、銀髪の少年が半壊した町を見て呟いた。
視線を向けた先には、今まさに逃げ惑う人間を捕らえ、その肉を引き裂こうとする獣がいる。
巨大な黒い狼のような姿で、鋭く光る金色の目。背中には大きな翼が左右に2枚ずつ並んでおり、大きな口には血に染まった赤い牙がビッシリと生え揃っていた。
「……!?」
女性の泣き叫ぶ声が、少年の鼓膜を伝う。
(人を……食べた?)
少年は初めて見た光景に嘔吐し、その恐怖からか足が竦んで動けない。
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