第0章 ~プロローグ~

2/4
45人が本棚に入れています
本棚に追加
/68ページ
1年前――。 大陸の南東部、ノトス地方にある町の名はランディール。そこは自然に恵まれた緑豊かな土地で、皆のんびりと幸せに暮らしていた。 だがある日のこと。それは突然やってきた。 耳をつんざくような獣の雄叫びと、人々の悲鳴が辺りに響き渡る。 「なんなんだよ……これ」 10代後半の、銀髪の少年が半壊した町を見て呟いた。 視線を向けた先には、今まさに逃げ惑う人間を捕らえ、その肉を引き裂こうとする獣がいる。 巨大な黒い狼のような姿で、鋭く光る金色の目。背中には大きな翼が左右に2枚ずつ並んでおり、大きな口には血に染まった赤い牙がビッシリと生え揃っていた。 「……!?」 女性の泣き叫ぶ声が、少年の鼓膜を伝う。 (人を……食べた?) 少年は初めて見た光景に嘔吐し、その恐怖からか足が竦んで動けない。
/68ページ

最初のコメントを投稿しよう!