胸を模る猫と鸚鵡

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季節は流れて。 山茶花はとっくに散り、青い風に芽吹いた蕾が枝垂桜を重くしならせる。開花も間近だろう。 友人と外出した私は喫茶店で休憩する。最近この辺りで人気の甘味なのだと勧められて、アイスクリームを頂いた。 一口、二口。 ミルクの匂い。柔らかく甘い味。 スプーンを運ぶ手が止まった私に、友人が不思議そうな表情。 猫との口づけの味。 思いがけず甦った唇の甘さと乳白色の毛並みに、震えた銀の柄がつるりと指から抜け落ちて。溶けかかったアイスをこぼしながら、机に硬い金属音を立てた。
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