1章 華畑

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そして川辺の芝生を駆ける猫の親子を見かけた。 私はカバンを漁りながら土手を駆け下りる。 「はい、ご飯だよ」 そして家から持ってきたにぼしを猫たちの前に置く。 猫たちは可愛い声で鳴きながらにぼしに近づく。 一心不乱ににぼしを食べる子猫の顔を親猫が舐める。 その瞬間―猫たちの胸元あたりにふわっと華が咲いた。 猫たちの毛の色と同じ、山吹色の華。 これが、わたしの不思議。 私にはなぜか『愛』が見えた。 それは華のカタチをしていて、誰にでも、どの生き物にも存在していた。 道行く親子にも、手を繋ぐ恋人同士にも、餌を欲しがるひな鳥にも。 その人が抱く愛のカタチによって、華の色も様々だ。 例えば恋人同士には赤い華。 親子には黄色の華。 淡い片思いには、桃色の華。 世界は…綺麗なお花畑だ。
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