1章 華畑

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そんなはずない。有り得ない。 私は瞬時にそう思った。 誰の胸にも蕾はあって、愛が高ぶった時に華になる。 それが私の常識。 なのに始めっから愛の欠片も持っていない人を見るのは、初めてだった。 私は釘付けになったように彼を見つめた。 一瞬、彼が私の方を見た。 だけど、私の気のせいだったのか彼はすぐに視線を逸らし坂道を登って行った。 どれ位、そこに立っていたのだろう。 上の方からチャイムの音が響いた。 「いけない!」 私は一気に正気に戻り、慌てて坂道を駆けのぼった。 これが、私と彼の出会いだった。
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