第1章『陸地球へようこそ』

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 空港のターミナルから出た途端、予想以上に冷たい空気にびっくりした。  百合山ツユミは、腕にかけていたブルゾンを羽織ると、肩より少し長い髪をさっと背中へ流した。 「さすが北海道ね。埼玉に比べると、まだまだ冬だわ」 「旭川いうたら、日本でもいっちゃんさぶいトコやいうからな」  後ろから、赤いダッフルコートを着込んだ峠キミカが、キャリーケースを引きずりながら、河内弁でそう受けた。 「それよりバス乗り場や」  左手方向にバス乗り場があり、一台停車しているのだが、目的地へ行くバスかどうかわからない。旭川行きか富良野行きか、それとも大雪山陸地球行きか――。  近づきながら運転席上の行き先表示案内を見る。 「やった。陸地球行き!」
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