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「じゃあなんで自首なんかしたんだ? 後悔してない奴が自首するか?」
佐古が訝しむような顔で僕を見る。
「……逆に聞きたいんですけど、そう思ってるなら何故わざわざそんなことを聞くんですか?」
自首した奴が後悔していると決めつけているのなら僕に後悔しているのかを問う意味がない。
「いや、別に意味なんかないさ。ただそれをきっかけにお前の話でも聞けたらなと思ってな。まさか後悔していないと答えるとは思わなかった」
そう言って佐古は自身の頬を掻く。
きっかけ、か。
「法廷で話した以上は、何もありませんよ。僕は彼女を誘拐し、殺したんです。それだけですよ」
そう言ってから再びウィンドウに頭を押し当てる。
「これはただの勘なんだがな、お前の証言には嘘が混じってるとしか思えないんだ」
佐古は、そんな僕の動作などお構いなしに話を続ける。
『これ以上話したくない』と口で言わなきゃ判らないのだろうか。
「……仮に嘘が含まれたとしても事実に変わりありませんよ。彼女を誘拐したのは僕だし、殺したのも僕だ。まさかそれが嘘だなんて言わないですよね」
誰かを庇って自首する程、自分の人生を嫌ってはいない。
「そうじゃないさ。目撃証言や状況証拠もお前が犯人であるという答えに結びついたんだ、間違いなくお前が犯人だよ」
……今にして思えば、一体いつ誰に目撃されたのだろう。
そんな稚拙な犯行をしたつもりはないのだけれど。
「俺が不審に思う点は、そこじゃない。お前の『動機』だよ」
「おまたせしました。買ってきましたよ」
「ちっ」
割と早い宮間の帰還に佐古が舌打ちをする。
宮間の前でこれ以上それに関する話をするつもりがない、ということなのだろうか。
理由なんてどうでもいいけれど、こちらとしては助かった。
「今、佐古さん舌打ちしました!?」
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