篠崎 賢

4/4
前へ
/7ページ
次へ
「ひとつ、聞いても良いですか?」 パーキングエリアから再び走り出し数十分が経過した頃、僕は、自分から佐古に話を振ってみた。 「……なんだ?」 やや意外だったのか、佐古からの返事が遅れた。 「普通、というか、テレビで見たような知識しかありませんが、こういった場合の時って犯人が逃走しないように両サイドに警察の方がいると思うんですけど、大丈夫なんですか?」 現在の車内の配置は運転席に宮間、後部座席に佐古と僕の2人が居るだけ。 しかしこれだと、どういう配置で座ろうが僕はドア側になり、その気になればロックを解除し外に逃げることが可能なのだ。 「大丈夫なんですかって、犯人に言われることじゃねぇのは確かだな」 佐古も納得していないのか少し不機嫌そうだ。 「別に逃げようとしてる訳じゃないですよ。ただ、見たところ内側から手動でロックを解除出来る車だったので、何故なのかなって思ったんです」 これで僕を取り逃がしでもしたら佐古と宮間は、肩身の狭い思いをすることになるだろう。 クビとまでは、いかなくとも左遷されたりくらいはするのではないだろうか。 「上からの命令なんだよ。どういう意図があるのかは、さっぱり判らん」 「佐古さん!!」 佐古の言葉に宮間が声を荒げる。 「ん?」 「ん、じゃないですよ!! 何サラッと警察の内情を話してるんですか!!」 まあ、確かに言われてみれば犯人に話すようなことではない。 しかし佐古は、慌てた様子もなく宮間の方を向いてすらいなかった。 「構いやしないさ。これから篠崎が行く所は、警察の内情なんか知っていたって何の役にも立たないし、それが外に漏れることもない」 「ですが……!!」 尚も収まりが付かない間宮を佐古が宥めるといった、まるで無駄な時間を消費している間に、僕らは、菜の花第二病棟に着いてしまった。 結局聞きたいことは聞けず、菜の花第二病棟がなにやら恐ろしげな所であるという不安要素だけが僕の情報に追加されただけだった。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加