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しばらく待つも返事はなく、仕方なしに勝手に上がらせてもらうことにした。
土足を脱ぎ、近くにあった下駄箱へと靴を仕舞う。
外観だけではなく、内装まで学校みたいな所だった。
辺りを見渡しスリッパを探すが、見付からず、来賓用の入り口でもあったのかもしれないなと、勝手に納得して諦めた。
普段行っていた病院のように、扉を開ければすぐに受付カウンターがあるものだと想像していたが、そういったものはなく、床を見れば黄色のビニールテープで矢印が描かれていた。
それが何を意味するものなのかは、いまいち分からなかったが、他にヒントになりそうなものがなかったので、それに従い歩く。
一歩進むごとに古い木造物特有の軋む音がして、どことなく懐かしい気持ちに包まれた。
窓から入り込む風も2月だというのに心地よく、自分が犯罪を犯した罪でここにいるということを忘れてしまいそうになる。
「……っと」
そうこう考えているとふいに目の前に扉が現れた。
いや、まぁ、勿論突然現れた訳ではなく、矢印を見ながら歩いていたせいで目の前に扉が迫っていることにギリギリまで気付かなかったというだけの話なんだけど。
木の扉に曇りガラスが取り付けてあって、ボヤけた先に人影らしきものが見えた。
特に躊躇する理由もなかったので、ノブを捻り戸を開ける。
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