序章

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気がつけば、アヤメの身体は空中にあった。  水音、水しぶきがあがり、アヤメの身体が消えた。その勢いはやはり激しく、如月アヤメの小さな身体が押し流されていく。  アヤメは水の中で、すべての感覚が一気に遠のいていくのを鮮明に感じた。  ――これでいい。  アヤメは思う。これでいいのだ、と。  ――このまま、静かに死んでいこう。  今思えば、なぜあの場で潔く死ななかったのかと彼女は思う。  けど、それはもういい。  忍びの少女は静かに目を閉じた。  濁流は、冷たくなろうとしている身体を有無を言わさずに流し去っていく。その中でも、アヤメは両手に持った刀を手放すことはなかった。
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