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建てる とある大工さんのお話 日曜日。 一行はいま幕家生活なので、一度に全員が出かけることができない。 戦士タオは剣闘士時代部屋に小さな戦いの神を祀る場所をつくっていたが、こうして礼拝に参加するのはサジたちと旅に出てからだ。 しかし信仰ということについては理解している。今日も晴れ晴れとした表情を見せていた。 「礼拝は好きだ。毎回来られないのが残念だ。司祭どのが使われる言葉がわかるようになれば、また違うのであろうな」 「あれはラテン語でございます。タオさまも医学書をひもとくようになれば、いろいろとおわかりになるでしょう」 バジルは柔らかいもの言いで応じた。 居残り組へのみやげにお菓子を買うと、サジが戻ってきた。二人がそろったところで、タオはおずおずと願い事を申し出た。 「…そのう…このあと、俺は少し回り道をしてもよいだろうか。長い時間ではない。昼餉には間に合うよう戻る」 「回り道」 「うむ。見たいものがあるのだ」 「なんなのです?それは。わたしも見せていただいてもいいものかな 「むう…たぶんふたりにとっては、面白くもない既知のものであろうが、今日は安息日。ひとの邪魔をせずに近くに寄れそうだから」「面白いものなのですね」バジルは微笑んだ。
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