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タオはいま使っている草場と、皆が待っている幕家のちょうど真ん中くらいの丘にきていた。
馬を繋ぐと、ゆっくりと登ってゆく。
それはあった。
思った通り、普段は作業をする人でいっぱいなのだが、今日は安息日。誰もいない。
無造作に積まれた石材。しっくい。木材。
高々とそびえる柱。
柱。柱と柱の頂点を結ぶアーチ状の飛梁。造成中の飛梁を支える追枠。
ロープで組まれただけの足場。壁。窓枠。モザイク…
それは建築途中の新しい礼拝堂であった。
「お嬢ちゃん、なにか用かい」
振り返ると短いひげを蓄えた男がひょろん、と立っていた。
腰からたくさんの仕事道具が下がっている。これから仕事にかかるのであろうか。
「すまない。邪魔をするつもりではなかった」
「いや邪魔だとは言ってねえけどよ。娘さんが面白いかい?こういうの」
「面白い。実は連れを置いて見に来てしまったのだ」
「へええ…建物を作っているところは好きかい?街中の礼拝堂が手狭になったっていうんで、こっちに建て直しているところなんだよ」
「礼拝堂は好きだ。背筋が伸びるここちがする。俺はタオ。羊を追ってこの国に来たのだが、この前の道をよく通るのだ」
「おっと、申し訳ねえ。俺はザクスってもんだ」
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