薄氷一枚

壱・アフターファイブ１/２

　キングは裸でも堂々とするものだ。

「てめえら落ち着け！　奴らは敵だと思うんじゃねえ。俺らはアイツラに冷や水ぶっかけて退場願えば良いだけだ」

　臆病者のキングは飄々と笑う。臆病者には臆病者の戦い方があるのだ。

　報告から十分待たずに二人組が壁を突き破って廃倉庫に入って来た。この街に住んでる化け物A。東雲八雲。対処方、男は近づかない事。女子供は殺人範囲外。

　そして化け物Aを追ってきた、化け物B。茅ヶ崎銀牙。地獄の番犬、報復絶刀だ。対処法、凶器を見せない。暴れない。コイツのモットーは目には目を、歯を剥いたら即へし折るだ。

　異名の通りどんな些細な「借り」も返す。刃物や銃をおもちゃみたいにひしゃげたり、叩き壊したりする。

　殺人鬼にくらべりゃ会話は通じるが、凶器に対する執着はまさに「狂気的」だ。これが余弦が知りうる、街のウルトラCの全てだ。