壱・ビフォーファイブ

3/14
5人が本棚に入れています
本棚に追加
/55ページ
 歩きのペース全くを落とさずにそのまま言った。 「よろしくハル」 「仮にも未来の上司を呼び捨てとは何事だろうな雪村サンよ?」  「アンタが呼べと言ったんじゃないか」と言い返すとややこしくなりそうなので不平は飲み込む。どこの上司も高圧的なのは変わらないのか。  ――まあ期待はして無かったけどさ。  金さえあれば飛ぶ鳥も落ちる。金さえ出すならクレムリン宮殿だって引っ張ってきてやる。そう、マッコイ爺さんだって言ってる。  お金は偉大だ。やっぱり金がなきゃ、食いっぱぐれてしまうのだから。  金が全てなんて守銭奴じゃないが、金で解決するなら安いと雪村は考える。  給金さえ支払われれば上司の小言も給金の内だと割り切ってしまえる。
/55ページ

最初のコメントを投稿しよう!