壱・ビフォーファイブ

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 応接間(というかオフィスと同室内だが)に通された雪村は夢島とにらめっこ状態だった。 「ハルさん。私はお茶くみロボじゃないんだけど」 「良いから、良いから、私のはミルク一つに角砂糖二つね」  何が良いのか解らないがデスクで作業していた、自分の未来の同僚であるところの女性に対し夢島がニヤニヤと笑いながら言った。  ていうかミルク一つに角砂糖二ってコーヒー牛乳かココアでも飲んだらどうなのだろうか。やはり気にしたら負けなのか。 「砂糖どうします?」  仕方ないなと言いたげにゆっくりと立ち上がると、会話の矛先が雪村に向かう。  無表情の中に若干の気怠さを覗かす目の前の綺麗な桃髪の彼女は、自分より年下か同年代と言ったとこだろうかと雪村は推察する。  それから角砂糖の数を聞かれたのだと気づき、慌てて「一つと答えた」ブラックの方が好きなのだが、既に給湯室に入っていった彼女を止めるのはためらわれた。
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