壱・ビフォーファイブ

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「まあ『局長』はこのビルのオーナーだ。本名は私も知らないし、私がガキの頃からこのビルで局長って名乗ってた」  「なんだよそれ謎すぎるだろ」と思ってからドキっとする。もしや、これも読まれているのではなかろうか。  そんな心配をよそに、夢島は何故か自分の手前のカップでは無く、雪村側のカップを手元に置いてミルクと砂糖を入れた。  一々謎な奴だと雪村は思う。 「で、なんでこんな高給取りなのか? しかもあんな簡単に採用しているにも関わらずにもって顔だな」  だからコイツはエスパーか。雪村は頷きながらも思う。 「警戒するのも無理はない。世の中美味い話なんんてのは無いからな。本当に美味い話は持ちかけた側が得するように出来てる。」  美味い話は自分だけで食べてしまうのが常。後はすべて釣り針に括り付けられた餌だ。 「どうしたってローリスク、ローリターン。ハイリスク、ハイリターンが世の常だ」  夢島は反応を求めずに続ける。
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