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ガラガラッと戸を開け、『時雨(シグレ)』と書かれた暖簾を外に出す。
それから、濡れた手ぬぐいで外に置いてある椅子を拭く。
「よしっ!」
二つの作業を終え、意気込んだ少女は、清々しい表情で建物の中に入った。
少女の名は、一ノ瀬葉七(イチノセ ハナ)。歳は十八。
二年前、何らかの理由でタイムスリップして幕末に来た。
そして、京に甘味処を開こうとしていた、ある家族と偶然出会い、一緒に暮らすことになったのだ。
今は甘味処『時雨』の看板娘である。
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