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「僕がどれだけ食べても、この体も払うのも僕だからいいでしょ?」
「だがその体はお前だけのものじゃなくて、仲間の運命も左右する大事な体だろうが!」
「晋作……」
気持ち悪い、稔麿と呼ばれた青年はそう呟くと抜刀しようとした。
え、待って、なんで抜刀!? と葉七は慌てだした。自然に心臓がグッと痛くなる。
「ああああのっ! お客様、ここはお店の中ですので止めてくださいっ!! マジで??」
恐怖のあまり、必要以上に大声を出してしまった。だがそのおかげで、稔麿は驚いて抜刀を止める。
「――どうしたっ!?」
葉七の大声に気づいたのか、大智が店の奥から顔を出してきた。とても心配していると、声で分かる。
「あっ、大智……っ」
ふと葉七は体の力が抜けた。しかし、誰かが私を受け止めてくれる。
「すみません、少年くん。ちょっと彼女を脅かしてしまっただけです」
支えてくれたのは、稔麿だった。彼の胸元にすっぽりとおさまっている。
(……あ)
稔麿から香る、甘い香り。
「それより、みたらし団子を四人前と餡蜜を二人前、わらび餅と抹茶饅頭二人前、あと桜餅を三人前よろしく」
「……は、はい、かしこまりました」
驚いた表情をしながら、大智は急いで注文された甘味を用意し始めた。
遅れたが、私はようやく我に戻った。
「ごめんな、嬢ちゃん。稔麿ってばすぐに刀を振る癖があんだよ」
「その原因はすべて晋作だ」
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