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※※※
「ほほう。これがはんばーがーなるものか」
ゲームセンターで小銭をむしり取られた僕は安上がりな昼食をファーストフード店で採ることにした。
目を輝かせながらハンバーガーを貪る死神少女ココロは、既に三つのハンバーガーを平らげ現在四つ目である。
誰だ安上がりとか言ったの。
……紛れも無く、僕だった。
これでは普通にファミレスとかの方が安く済んだ気がする。
神崎真、痛恨の選択ミスである。
「うむ、愉快じゃのう。
これで心残り無く魂を刈れるというものじゃ」
「なんか目的が微妙に変わってるような気がするんだけど」
この死神はただ単に遊びたかっただけなのでは?という疑問を抑えつつ、僕は朝気になったことを聞くことにした。
「魂を刈るってどんな感じなの?」
「う?これまた珍しい事を聞くのう。
そのような質問をされたのはおぬしが初めてじゃ」
ココロは少し、考えてるのか間を空けると。
「一言で言えば、辛いのう」
「からい?」
「つらいじゃ」
意外だった。
死神ってのは殺人狂なのかと思っていたが、割と人間のような感情を抱いているのかもしれない。
「おぬしは、人を危めた事はあるか?」
「直接的には今のところないよ」
僕の周りには不幸が集まる。
そのせいで死んだ人もいる。
その点を考えれば、間接的には殺しているのだろうが。
「まぁその歳で殺人犯じゃったらびっくりじゃな。
儂は死神になって一年ちょっと経つが」
死神になって一年ちょっと。
引っ掛かったが言及しない。
死神になる前はなんだったのか、なんて、そんなこと聞くべきではない。
彼女の姿形を見れば、何となく想像できた。
「儂は今まで99人の人間を殺しておる」
殺す、という直接的な表現を使われると、少し身震いする。
この可憐な少女の口から紡がれるには似合わない言葉だった。
「魂を刈るのが死神の努めじゃ。
じゃから仕方ない事なんじゃがのう。
しかしやはり生きる者のその後の未来を奪うのは辛いのう。
沢山の未来を奪っても、慣れるものではないし慣れたくもない。
儂は死神であって殺人狂ではないのじゃ」
刈らなくてよいなら刈りたくはない、と。
少女は言った。
思った。
死神も人間も、結局の所感じるものは一緒なのだろう。
ゲームセンターでゲームをすれば楽しいし。
ハンバーガーを食べれば美味しいし。
心臓を刺されれば痛いし。
命を奪うのは辛い。
ただそれだけの、当たり前の事だった。
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