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「んにしても、お前も物好きだよなぁ。
自殺志願の人間しか殺さないなんて」
男がニヤリと不吉に笑う。
「そんなに、死神を増やしたくないのか?」
「!!」
え?
どういう事?
「神崎真。
知らないだろうから言っておくがな」
「やめるのじゃ!!」
「死神はもともと、人間だ。
それもただの人間じゃねぇ。
死神ってのはなぁ」
ゆっくりと、犯人を明かすように、男は言った。
「自殺した人間の魂から出来ている」
「!!」
死神はもとは普通の人間だ。
それは彼女、ココロの姿形を見ればだいたい想像できた。
しかし。
死神は、自殺した人間から生まれる。
それは、この死神少女ココロも僕と同じように。
この世界から逃げた事を意味する。
「うぐぅ…ぁ…」
男が急に悲鳴とも言えないうめき声をあげる。
それは男の腹に、大鎌が。
死神少女ココロの大鎌が、男の腹をえぐった合図だった。
「減らず口が過ぎたな。
戦いに対する集中力が足りぬぞ」
「てめぇ、死神大王の遣いである俺を斬るって事が…どういう事か…わかってんのか?」
「……」
どさり、と男は倒れた。
ココロは僕の方を振り返ると。
「安心せい。死神は死なぬ。そう言ったじゃろうが。
こやつは心配いらぬ。
しばらくすれば意識も回復するじゃろ」
弱く笑いながらそう言った。
それよりも。
「あんたも、自殺したのか?」
僕は彼女に、そう聞かずにはいられなかった。
何故黙ってたんだろう。
「そうじゃ」
短く、一言。
彼女はそう言った。
「本当は言いたくなかったんじゃがのう。
じゃが、ここまで知ってしまったなら、話した方が良さそうじゃな」
彼女は、真っ直ぐに僕を見る。
その澄んだ瞳に、僕は思わず息を呑んだ。
「聞いてくれるかの?
全てを失った少女、小早川心(コバヤカワココロ)の生涯を」
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