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「最期は酷いものじゃったな。
儂もおぬしと同じ、校舎の屋上から飛び降りた」
「………」
『言っておくがな、おぬしのような居場所の無い者は世界に五万とおるし、儂は何人もそのような者達を見ておる。
自分だけが不幸だ、なんて思わないことじゃの』
彼女の言葉を思い出す。
その言葉は、あまりにも自虐的であった。
「こんな話をせず、おぬしが自分自身で考え、悩み、そして生きるか死ぬか、選んで欲しかったんじゃがのう」
「つまりあんたは僕を助けるために、僕を殺しに来たって事か」
それどころか、彼女は今まで99人の死神の卵を救って来たのだろう。
自殺志願者を、導いて来たのだろう。
「死神は辛いからのう。
こんな辛い思いは皆にして欲しくないのじゃ。
と言っても、殺してしまった事に変わりはないがのう」
神様に選ばれず、救われなかった者は、自殺という道を選ぶ。
だがしかし、その選ばれなかった者達を、彼女は救っているのである。
この死神はもはや神よりも神らしい。
きっと世の中の弱者達は、僕を含めこんな神を望んでいたのだろう。
「今わかった。
おぬしには生きて欲しい。
99人救えなかったが、儂は今度こそ真の意味で救いたい。
おぬしは生きて欲しい」
「………」
僕は、何も言え無かった。
僕以上に僕の事を考えている彼女が、僕には眩し過ぎた。
「もうすぐ、儂を捕らえに死神大王がやって来るじゃろう。
おぬしは逃げろ。
そしてもう自殺などしないと誓え」
死神大王の命令に逆らった彼女は、当然罰を受けるだろう。
だがそれは僕にしてみれば理不尽な罰だった。
人を救って、最後に自分は救われない。
そんなの、許せ無かった。
この、神よりも神らしい死神少女を、助けずにはいられなかった。
「逃げよう」
「む?」
僕は彼女の腕を引くと、全力で駆け出した。
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