終わる世界と始まる世界

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「終わってなど、おらぬ!!」 死神大王の一振りを受けたのは、僕ではなく。 ココロだった。 僕を庇ってくれたらしい。 「ココロ!?」 「安心せい。 人間を刈る刃で儂は死なぬ……?」 おかしい。 人間を刈る大鎌は、死神を殺せない。 つまり、今の一撃でココロは殺せない。 殺せないはずだ。 絶対だ。 確認済みだ。 ならば何故。 彼女からは血が溢れているのだろうか。 彼女はこんなにも辛そうなのだろう。 答えは、一つしかなかった。 「が…ぁぁ……」 「ココロ!!」 死神大王の大鎌は二つとも、死神を刈る "死神王の大鎌(キングデスサイズ)"!! 「かかったな」 「くそぉぉ、畜生ぉぉ!! ココロ!!」 僕達は、最後まで死神大王の掌の上で踊っていたらしい。 ココロは地面に吸い込まれるように、倒れた。 信じられなかった。 信じたくなかった。 信じられるはずがなかった。 ――彼女が、死ぬなんて。 「小早川心を殺した今、もうお前には用はない。 せいぜい最後の別れ話でもするんだな」 そう言って死神大王は消えたが、今はそんな事どうでもいい。 僕の目にはココロしか映っていない。 どうすればいいんだよ。 どうすればココロを救えるんだよ。 僕はココロに救われたんだよ。 なのに。 僕はココロを救えないのかよ。 どうなんだよ、神様。 「…マコト、無事か?」 弱々しく、彼女は言った。 あの美しい声は、今ではこんなにも儚いものとなってしまった。 「そんな状態で他人の心配なんてするなよ!!」 「無事らしいのう……」 良かったのじゃ、と。 彼女は呟いた。 どこまでも、死神らしくない死神だった。 「……マコトと一緒にいる時間、とても楽しかったぞ」 「楽しかったって。 僕と過ごした時間なんて一瞬じゃないか」 「一瞬でも、一緒じゃ」 そう言ってココロは口許を緩める。 もう、終わりそうなのに。 「儂は……、マコトを救えたのかのう」 「救えたさ!! その証拠に僕は生きてる」 「そうか、救えたか」 ならば、とココロは続ける。 「儂は死神になって良かったのう」 そう言ってココロは薄く笑った。 それっきり、ココロは何も話さなくなった。
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