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「危なかったのう」
「!?」
背後、僕の死角で再び声。
今度ははっきり聞いた。
その声はこの青空より澄んでいて、この風景よりも美しく。
僕なんかとは比べものにならないくらい、可憐で無邪気だった。
居るんだ。神様じゃなく、生身の人間が。僕の後ろに。
声を聞く限り、女性のようだ。
でもなんて声をかければいいのだろう。
助けてくれてありがとう?
なんで助けたんだ?
「………」
いい言葉が見付からず、振り返る事が出来ない。
そのまま数十秒、僕のモーションは電池が切れたおもちゃのように停止していた。
「どうした、おぬし?」
「!?」
僕が振り返る前に、彼女(やはり女性だった)は僕の顔を覗き込むように僕の前、視界に入って来た。
どうやら、年齢は僕と同じか、それ以下くらいだ。
身長は僕より頭一つくらい低い。
僕の身長が169センチだから、彼女は150センチくらいだろうか。
それでも彼女が大人びて見えるのは腰の辺りまで伸びる艶のあるサラサラの黒髪のせいだろうか。
可愛い、というよりは、美しい、という言葉の方が似合う、可憐な少女だった。
いや、少女考察なんて今はどうでもいい。
問題なのは。
「何が、起きたんだ?」
そこだった。
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