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「自殺しようとしたおぬしを儂が助けた。
それだけの話じゃが」
キョトンとした顔で彼女は答える。
「どうやって、助けたんだよ」
「簡単じゃ。
落ちるおぬしを儂が引っ張り上げたのじゃ。
なかなか大変だったぞ」
「引っ張り上げたって…。
ふざけんな。そんなの翼でもないと出来ないだろ。
生身の人間に出来るわけがない」
もうちょっとマシな嘘を吐いて欲しい。
それほど僕の常識は崩壊してはいない。
「儂が人間じゃといつ言った?」
「は?」
瞬間。
彼女の背からは。
漆黒の翼が生えていた。
それはこの世の物とは思えないほどに禍禍しく、可憐な彼女には似合わない凶悪さだった。
烏の翼、というよりは。
死神の翼。
そんな感じだった。
「儂の名はココロ。
職業は、死神じゃ。」
そう言って彼女は漆黒の翼を羽ばたかせる。
辺りに緩やかな風が舞った。
え、死神ですか。
「……」
「なんじゃその痛い子を見るような目は!!
さてはおぬし、疑っておるな!!」
「いや、信じろって方が厳しい」
「この翼を見て疑う者はおぬしが初めてじゃな。
おぬしはまだそんなに気を病んでいないと見えるのう。
うむ、ならばこれでどうじゃ」
次に出てきたのは、鎌だった。
漫画やアニメで死神がよく持ってる、大鎌だった。
「ほれ、死神じゃろう?」
「……」
「信用してない!?
おぬし、相当な捻くれ者じゃな」
「素直で真面目だったら自殺しようなんてならない」
自覚はあるんだけど、改めて自分で言葉にすると少し切なくなる。
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