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※※※
とりあえず自宅へと帰ることにした。
「どうして付いて来るんだよ」
「魂が欲しいのじゃ」
「断る」
死神少女、ココロが勝手に後を付いて来た。
厄介なのに捕まった、と今更気づいたところでもう遅かった。
このまま家まで上がりこんできそうな勢いである。
ううむ。
「では儂からも質問いいかのう」
「……」
僕は応えない。
「了承と受け取るぞ。
おぬし、何故自殺しようと思ったのじゃ?」
「……」
いきなり核心を突いてきたことに驚きつつ、理由を話す事で同情を誘えば魂刈りを躊躇うかもしれない、という策略を抱いた。
話してしまうか。
多少、楽になるかもしれないし。
「両親が、死んだんだ」
「ほほう」
死神少女は別に驚きもせず、そんな事は今まで何度も見聞きして来ましたよ、といった感じだった。
流石死神、といった感じだ。
「それで僕は親戚に引き取られるはずだった」
「ほほう」
「でも誰も僕を引き取ろうとしなかった。
両親の葬式で聞いちゃったんだ。
『あの子は不幸を呼ぶ子だ。
引き取ろうものならたちまち災いが降り懸かる』ってさ」
「ほほう」
6歳の時。一緒に遊んでいた友達が目の前で車に轢かれて死んだ。
8歳の時。やっと買えた一軒家が一週間で全焼した。
11歳の時。父親の会社が倒産した。
そして14歳の時。両親が事故で死んだ。
どうやら僕は不幸を集める人間らしい。
「僕は要らない人間なんだ。
僕の存在はただ周りを不幸にするだけ。
居ない方が、皆幸せになる」
「ほほう」
「あんたそれしか言えんのか」
「おお、すまぬ。
いや、典型的な自殺動機じゃな、と思ってな」
「は?」
彼女は不服そうに続ける。
「言っておくがな、おぬしのような居場所の無い者は世界に五万とおるし、儂は何人もそのような者達を見ておる。
自分だけが不幸だ、なんて思わないことじゃの」
「つまり?」
「元気を出すのじゃ、ということじゃな」
そうだったのか。
全然伝わらなかったな。
「というわけで魂が欲しいのじゃ」
「脈絡がまったく感じとれないんだけど」
この死神、頭悪いのだろうか。
いや、そもそも死神に人間の常識が通用するのだろうか。
あらゆる方面で常識に捕われない少女だった。
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