悪夢の終日

4/5
前へ
/45ページ
次へ
「大丈夫。俺が家族となる。俺達と暮らそう。大変だと思うし、変人ばかりだ。だけど楽しいと思う」 「っ……何をっ…」 “家族”その言葉に、そんな声を漏らしても男は話を続ける。 「最初は慣れないけどみんなすぐ貴方の事を好きになって、みんなのことも好きになれる。それでみんなで暮らそう」 「ぅぅっ…」 「8人いるから9人で。仕事もあるけど人を殺したりするだけだから大丈夫」 …………は……。 「大丈夫なわけないでしょう!!!!!!!」 殺人て事だよね。さっきしてたけど…いきなり来て来いとか言って、殺人なんて。阿呆らしい。出そうになった涙も引っこんじゃいましたよ! 「やっと感情が見えた。はははっ」 無表情が一瞬にして変わる。状況には全く不釣り合いな顔をしながらも、男は言う。 「でも実際、世間から外れたらそうやって生きてくしかない。でも大丈夫。悪いことじゃない」 「でも…」 精一杯の反論をしようとする。 「大丈夫。俺らが家族なんだから」 微笑みながら男は言う。 ―――これがずっと求めていたもの、なのだろうか。 疑問から不信感そして感激。気持ちが不安定になっているせいか、揺らぐ――。 「うっ…うっ…ぁんっっうぁ~ん」 玄関で立っていられず崩れながら泣く。もういいんだ。苦しくなくていいんだ。願っていた事。一人じゃなくていいんだ、只々そう思った。
/45ページ

最初のコメントを投稿しよう!

13人が本棚に入れています
本棚に追加