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<ジャー――――>
私は今、自宅のお風呂でシャワーを浴びている。あの男の人はリビングで死体検分をしているようだった。
血を洗い流して、シャンプーやボディソープはいつもの3倍くらいつけて臭いも流す。
体を拭いて、服を着てリビングに行くと冷房が付いていてさっきまでした、不快な臭いもほとんど消えていた。
「なんで冷房なんて付けてるんですか。今日そんなに暑くないですよ?」
しゃがんで手を死体に触れたままの男に問いかける。
「死後硬直を……まぁ警察に分かりにくくしてるんだ。死んだ時間とかをずらす為に。刑事モノとかで見たことねーのか」
「あ…はい」
刑事モノなんて見たことはない私なので曖昧な返事になってしまう。
男は立って、自分より小さな背丈の私の髪を掬い上げ嗅ぐ。
「ほぇ…?あの…」
突然の事だったし、男の人に触られるのなんて1年振りだったのですっとんきょんな声を出してしまう。
「臭いは取れたな。じゃぁ荷物まとめな」
初めの敬語はどこへ行ったのやら、勝手なことを言い出す男。
「何処にか行くんですか」
「俺たちのマンションに行く。それとも此処の思い出は捨てるか?」
「あっ…えっっと」
「嘘だ。待ってるから、準備して来い」
「すぐ済ませますからっ」
「ゆっくりでいいから」
なんとなくだが空気が変わった――そんな気がした。だがそこには触れず、小さな自分の部屋へ向かう。
一昨年の集団宿泊で使ったキャリーケースを引っ張り出してきて、中に着替えと通帳、両親の写真と両親にもらった白いウサギのぬいぐるみを入れる。
「制服って要りますか」
部屋からリビングに向け言うと行かなくてもいいから自分で決めろと、言われたので思い切って置いて男のもとへ向かう。
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