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――ここは都心部から少し離れたとある住宅街の一角。
「グギャァァァァァァァ」
普段は閑静な住宅街に、咆哮が轟き響く。
紅いドラゴンが火を吹きながら見境なしに暴れている。
身体と同様に紅色に光る眼、あれを見たら一目でわかる。正気じゃあない。
……いや、ほんとはドラゴンって賢いからこんなこと滅多に起こらないはずなんだがなあ。
ちなみに誰があんなに怒らせたのかは大方予想はついてます。
ああ、死ねばいいのに。あのクソデブ。依頼主とかもう知らない。よし死ね、デブ。
「……はぁ、頭が痛くなってきた。何でこんな面倒な仕事をしなきゃならないんですかね、よし、帰ろうさあ帰ろう」
「折角私が着いて来てあげたのに帰るとは何事かしら。血祭りわっしょいしたいのかしら?」
「……いやっふー、ゼロさん頑張っちゃうぞー(棒読み)」
溜め息と共におれの呟いた独り言に、隣に立っていた金髪の少女が「てめえの血は何色だ」という怒気に満ち満ちた視線を飛ばしてくる。
うん、このまま帰ろうとしたらこの娘に後ろからボコられグサられ大変なことになっててましたね。つーか血祭りわっしょいってなんぞ。
――あ、はいどうも、はじめまして。依頼なら何でもござれ、万屋のゼロさんです。
今回の依頼は『ペットのドラゴンが暴れ出したから捨てたので、大人しくさせてから捕獲して騎士団へと引き渡してほしい』というもの。
暴れ出したから捨てたって理由がもう糞すぎて、それ聞いた瞬間に依頼人殴り飛ばしそうになったもん。
何でもござれとは言うけども、高い報酬がなかったらこんな依頼誰が受けるかってーの。
「……あー、しっかしこれまた……」
ドラゴンを見上げながら、凝った肩をゴキゴキと鳴らす。
正確にはわからないけど大体ドラゴンの全長は10から20メートルぐらい。そりゃ肩も凝りますわ。
「すごく……大きいです」
ああ、これ連邦の白いやつと良い勝負できる大きさだわ。いい感じに紅いし。ついでに三倍の速さで動けたら完璧だよ、もう。
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