拝み虫

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霞む視界、体は脳からの信号を拒否しているのか動くことはない。 先ほどの光景が脳裏に浮かぶ。 錆びたフェンス、腐ったパイプ、汚ねぇ宿屋、 空気は淀み、もやがかかっている。 必死に働いて稼いだ金を懐にしまい意気揚々と帰り道。 いつから後ろにいたのか、背に衝撃を受けると同時にジワリと熱いものを感じる。 振り返ると背に刺さっていた物がぬける。 カラーン。 影、おそらく自分を刺した影。 くっそたれ!! なんだ?刺された?体から力が抜け崩れ落ちる。 壁によりかかる体を引かれる。 懐をまさぐられ、触れる、1ヶ月昼も夜もなく働き稼いだ金に。 キタネェキタねぇ汚ねぇ! 影は金を見つけるとヘヘッと笑い去っていく。 必死で睨むがなんの意味もない。 「悪ィなニイちゃん」 コイツ!!よくもそんなことが言える! 激昂したとて体は動かない。
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