プロローグ

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泣きつかれて眠ってしまった次の日。 もう涙は流れて来なかった。 枯れてしまったのか、流れてくる感じさえない。 窓から射し込む朝日が目に刺さり、無意識の内に空を見上げる。 その時に思い出してしまう。 あの時にした…… あの約束を…… 「必ず帰ってくる」 その言葉が心の中で繰り返されている。 「笑ってくれ」 また、別の声が心の中で繰り返される。 いつも聞いていた、あの声で。 「こっちの気も知らないで」 ぼそっと呟く。 それだけだったのに、私の気持ちは自然と軽くなっていた。 快晴の空がどこまでも続き、私はその空に向かって言った。 笑いながら。 「これでいい?」 誰も答えてはくれない。 換わりに、優しい風が体を包んでくれていた。
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