訃報

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今まで、私はひたすら、前を見て歩いてきた。哲司と和美に裏切られてからも、私なりに色んな事があった。  これでもか、これでもかと、やって来る向かい風にも、立ち向かって来た。過去を振り返る余裕など何処にも無かった。  後ろを振り向かず、必死で歩いて来た私の人生。だが、真の人生は違ったのだろうか?私には判らない。    この人生は、私が彼に手渡したモノではない。彼の人生も、私の人生の道標も、あの時、真自身が選んだものだ。なのに、あなたは一体、何に囚われていたのだろう。  真を縛って放さなかったものとは、哲司の話しぶりからも、ただの罪悪感だけだったとも思えなかった。  だが、真の家庭が今も尚、幸せであったなら、私を思い出す事もなく、このタイピンは屑と化していたのだろうか?  私にとって、忌まわしい過去が、彼には美しいものとして、刻まれていたという事実に私はショックを覚えた。
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