訃報

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驚かなかったと言えば、嘘になる。まだまだ若い男盛りの彼が、無念の最後を遂げたと言う事は、多少なりとも私にショックを与えたが、正直、それ以上の感情は無かった。    それは、別段、真だからという訳では無い。あの時、恨まなかったと言えば嘘になるが、くだらない恨み事さえ、その時、私は感じなかったのだ。  葬儀は一時から始まると聞いている。今更、出向く義理もなかったが、当時の仲間であった哲司に誘われ、断りきれなかった。    言い訳かと自問自答したが、そういう訳でもない。仕方なしにと言えば、随分失礼な話になるが、進まぬ重い足取りで私は会場に向かうため、このバスに乗り込み、揺れる車中、私はぼんやり、そんな遠い記憶を繋ぎ合わせるのだった。  葬儀の会場は質素ではあったが、思ったよりも、人が多い。  哲司が詳しく場所を教えてくれていたので、迷わずに済んだのは有難かったが、ここら辺は昔、真と何度か来ていたというのも幸いしていた。田舎のせいか、町並みも殆ど変わらずにいる。  会場に私と面識のある人は少なかったが、私が来る位だ。きっと寂しい葬儀にならぬようにと、哲司が八方、知人に連絡をとったのだろう。  会場に入って、真っ先に目に飛び込んだのは、真の遺影だった。  真の遺影は、過ぎ去った年月を感じる。この人を私は好きだったのだと、今の私は、不思議な気分でそれを見た。  確かに面影はあったが、そこにある遺影は、私の知っていた真とは、随分違って見える。年月のなせる業なのだろうか?    無理に、この男と供に暮していたら、どんなだったろうかと、想像しようとするが、これといって何も思い浮かばない。  そんな自分を少し冷たく感じた。  
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