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爽快な青、どこまでも澄んだ白、優しい緑、初々しいピンク、無機質な灰色――。 景色は流れ。 そう、私の目の前に広がる景色が、下から上へ。 私の体は上から下へ。 大好きだったトランペットを抱え。 夢中になった管楽器を抱いて。 ……自分みたいに少しだけ曲がってしまった管を撫でながら。 私は落ちる。 世界が終わる。 違う。 私が終わる。 ここから眺める景色が好きだった。 違う。 嫌いだった。 どっちもどっちで裏表。 違うけど正しくて。 全ての思い出が愛おしくも、憎らしい。 そんな矛盾した感情。 この混沌とした空間からの解放を求めて、今、体が地面へと歩みを進めた。 いじめられた私への報いがこれ。 いじめられた私が悪い。 誰も悪くない。 気持ち悪いのは私で。 臭いのは私で。 友達がいないのは私で。 ……私を庇った彼は、目を醒まさなくなって。 私。私。私。 結局、自己中心的なのは私で。 これでよかった。 何だか、生まれてきて一番そう思える瞬間に出会えた。 私の意識は彼の元へ向かえるかな? それでも私の心は晴れやかで。 それでも私の顔は晴れやかで。 勢いよく流れる景色に映る、少し汚れているはずの校舎の壁が、何故だか今日はキレイで、見守っていてくれているようだった。
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