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「あたしらもう高校2年じゃん。そんな小説ばっかじゃなくてさ、紗江は男作んないの?」
「え! わ、私が?」
鼻をかもうと息を吸い込んだところだったので、声が大きくなってしまった。
響いた自分の声に赤面しながら辺りを見渡す。
「うん、紗江」
不意に投げ掛けられた質問は、私の苦手とする部類のものだった。
「私は、ほら! まだ早いっていうか……ね」
とりあえず濁しておく。
誰から言われてもそうだった。
家族から言われても、他の友達から言われても。
「早い、じゃないよ。ずっと小説にすがり付くつもりなの?」
「すがり付いてないもん。だ、大体、陽子(ようこ)だってずっと私と一緒に遊んでるって事は、彼氏いないじゃん」
陽子とは放課後も一緒に帰ってるし、そんな話は一度も聞いた事が無かった。
「いるよ」
「うそ!?」
「……うそうそ。ごめん。でも、好きな人は出来たよ。紗江はいないでしょ」
「うん。てか、考えた事もないよ」
少しだけ、陽子から視線をそらした。
まったく、と聞こえて来そうな顔で、羨ましくも私より大きい胸の前で腕を組んだ。
「ほらほら。飢えた狼どもの巣窟だぞ。外で遊んでる男も。図書室で勉強してる男も」
「ちょっと……やめてよ気持ち悪い」
「なに言ってんのよ。教師だってその一人なんだからね」
考えただけで鳥肌が。
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