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長かった中学校生活も終えて俺は、高校生になった。
春のあたたかい陽射しを浴びて自転車を漕ぎながら柄にもなくロマンチックなことを考えていた。
それもそうだ。
なんせ、高校生活の始まりだ。
わくわくするし胸が弾む。
教室の自分の席に着いても落ち着くことはなく、そわそわしている。
まわりの人は、きっとトイレを我慢しているに違いないと思っていることだろう。
それにしても、なんだ。もう俺も高校生だ。
恋人の一人や二人いてもおかしくない年頃だ。いや、実際二人いたらそれはそれであれだけど。
とにかく、春が来た。
これからなにか始まりそうな予感。
何がって?それは、“恋”に決まっているだろう。
そう、恋のはじまりの予感、、、なんて浮かれていれば鬼のような形相の、姉がそこに立っていた。
ここは、一年のクラス。そして、俺の席のちょうど真ん前。
俺は、驚いて椅子から飛び上がった。いや、実際は飛び上がってはいないんだけど、、、。
「あ、姉貴っ!?」
そう、こういう時でも忘れないのは機嫌の悪い姉への配慮ではなくカッコつけることだった。
家で『ねーちゃん』なんて呼んでても外では『姉貴』なんて呼んじゃう無意識になんだけど。
「姉貴っ!?じゃないでしょ。全くそそっかしいんだから、、、」
姉の手からぶら下がっていたのは、正しく今、俺の鞄に入っている筈だった弁当箱。
感服して言葉もでない。
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