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――65歳 春 幸せ
「仁さん、今まで何度この桜を一緒に見てきたでしょうね?」
「数えきれないだろうな」
「そうよね、でも今が一番幸せな気持ちで見ているわ」
「そうか、なら良かった」
「仁さん、桜色の雨よ?」
「なに?」
「忘れてしまったの?
花びらが舞い散る光景を、仁さんが桜色の雨だと言ってたじゃない」
「そうだったか?」
「もぉ、本当に忘れてしまったの?」
「覚えているよ、……あの約束の時を、忘れるはずはないから」
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