第一章 Aの正体

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隊士に全く抵抗することもなく、少年――笹川は淡々と言う。 むしろ、案内してくれないかと考えて目をキラキラさせていた。 「質問に答えろ!」 笹川は強く隊士に取り押さえられた。 異性の肌が触れていると無駄に焦る笹川。もとい変質者。 「私は怪しい者です!だから離して、土方殿に合わせてくださいよ!」 「――! お前ふざけるなっ!」 隊士がおちょくられたと思って笹川に激怒する一方、笹川は混乱している。 (素手で私の肌に触るな、触るな。 つーか、腕を掴むのはよしとしてさりげなく腕絡ませてんの止めろ。 そんで、鳥肌たつな私の全身!) 笹川は人に自分の体を触られるのが極端に嫌いで、顔と手以外は鳥肌がたつのだ。 隊士が刀に手をかけた所で笹川は我に返り苦笑いをする。 「ちょっ……冷静になりましょう。私、ほら、刀を右側に差してる。戦う意志も体力も根性もないですよ。 敵でも回し者でもないですって。 ただ、ほら。土方殿に……」 「……笹川さん?」 必死に弁解していると聞こえてきたのは沖田の声。 「沖田さん!良かった、助かった」 そこには不思議そうに顔をした沖田がいた。 笹川にはその顔が凄く格好良く見えたらしい。 (あぁ、神!おっきー(沖田)、君は神だ!) それから、土方に会いたいと笹川が言うと沖田は隊士から笹川を引き離し、連れて行った。 「沖田さん、本当に助かりました。 冷や汗かいちゃいましたよ」 (……色んな意味で。) 笹川はホッとして深くため息を吐き出した。 それを見て沖田はクスクスと笑う。大袈裟なため息が面白かったらしい。 勿論、笑われている本人は何故笑われているかと、沖田をじっとりとした目で凝視していた。
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