第一章 Aの正体

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「ところで今日はどうしたんですか?土方さんに会いたいなんて」 「もしかして、惚れました?」と聞いてくる沖田に笹川は「それはないです」と即答した。 「頼みたいことがありまして……。なんか私、誰かに後を付けられてる気がするんですよ」 沖田の感情がピクリと動いた気がして、笹川は笑みを深めた。 (私のパソコンに触ろうとした馬鹿野郎は沖田さんに関係があるのか) そう確信した所で、ラスボスである土方の部屋に到着した。 前回と同じように沖田さんの隣に座る。ちなみに、今回は転ばなかった。 土方は徹夜明けなのか酷い隈があった。 「何だ」 「単刀直入に言います。私の所によこしている男、どうにかしてください」 おいおい、本当に直球だな。 と言いたげな視線を笹川に向け、沖田は驚いたように笹川を凝視した。 「おい、俺はそんな奴知らねぇ。だいたい、なんでその男と俺が関係あると思った?」 「私、見るからに危険じゃないけど不審者じゃないですか。 ……だから、私があなただったら見張るかなって」 (実際に私だったらガン無視するけどね……) 土方の目はどんどん色をなくしていった。鋭く、刺されるような感覚に陥る。 あぁ、この恐怖感、書き留めたい。 「……別に、見張りを止めろって言ってないです。 着替えを覗こうが、私のことを調べようが、私が気付かないようにしてくれれば構いませんし。 ただ……」 笹川は口角が上がるのに必死に堪え、それを手で覆い隠した。 「部屋にある鉄の固まりに触らないでくださいね」 (……帰れなくなっちゃうから。現代に) 笹川は綺麗に笑って言った。勿論、目には感情がなく、明らかな作り笑いだ。 土方は、舌打ちをすると低く声を発した。 「てめぇ、何者だ」 笹川はキョトンとした。 (名前、言ったよな?なーんて) とりあえず、営業の作り笑いのまま、自分を名乗った。
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